よだかは、みにくい鳥でした。
顔が平べったくて、口がおそろしく大きい。羽はぼろぼろのまだら模様で、見た目はお世辞にもきれいとは言えません。
ほかの鳥たちは、よだかを見ると顔をしかめます。
「あいつ、みにくいなあ」
「よだかっていう名前もいやだ。鷹の仲間みたいじゃないか」
鷹はたいそう怒って、よだかに言いました。
「おまえは明日までに名前を変えろ。さもないと承知しないぞ」
よだかは悲しくなりました。名前を変えたところで、何も変わりません。みにくいのは変わらない。だれにも好かれないのも変わらない。
よだかには弟のかわせみと妹のはちすずめがいます。ふたりとも美しい鳥で、みんなに好かれていました。よだかは弟と妹のことが大好きです。せめてふたりに恥ずかしくない兄でいたいと、いつも思っていました。
それでもよだかは、毎晩空を飛びます。夕暮れになると目を覚まして、大きな口を開けて虫を食べながら飛ぶのです。ぶうんぶうんと羽を鳴らして、暗い空をすいすいと。夜の空は広くて静かで、だれもよだかをみにくいとは言いません。飛んでいるとき、よだかはすこしだけ自由でした。
けれど、よだかはふと思いました。自分は生きるために虫を食べている。虫たちにとって、自分はおそろしい存在なのだ。みにくいだけでなく、ほかの命を奪って生きている。
よだかはもう、この場所にいたくなくなりました。
「ぼくは遠くへ行こう。できるだけ遠くへ」
よだかはかわせみのところへ行って、別れを告げました。
「かわせみ、元気でいろよ」
それだけ言って、よだかは夜の空へ飛び立ちました。
空を見上げると、星がたくさん光っています。大きな星、小さな星、青い星、白い星。きらきらと、静かに光っていました。
「星さん、ぼくをそちらへ連れていってください」
よだかは星に向かって飛び始めました。一番近くに見える大きな星めがけて、ぐんぐん上へ。
風が冷たくなります。空気が薄くなります。でもよだかは飛び続けました。
大きな青い星に声をかけました。
「星さん、どうかぼくをそばに置いてください」
けれど星は答えます。
「それはいけない。おまえは夜の鳥だろう。お日さまに頼んでごらん」
赤い星にも頼みました。白い星にも頼みました。どの星も同じように答えます。よだかは何度も何度も飛び上がっては、星に断られました。
それでもよだかはあきらめません。
力をふりしぼって、まっすぐに空へ昇っていきます。もう羽がきしんで、体がばらばらになりそうです。息がつまって、目の前がちかちかと光ります。
それでもよだかは飛びました。
どれほど飛んだでしょう。ふっと体が軽くなりました。痛みも、苦しみも、すうっと消えていきます。
気がつくと、よだかの体がほのかに光り始めていました。まだら模様の羽が、青白い光を帯びて、やわらかく輝いています。
よだかは星になったのです。
今でもよだかの星は燃え続けています。ほかの星たちと並んで、静かに、あたたかく。小さな青い光で、地上の夜をそっと照らしています。