むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。
ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると、上流から大きな瓜がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
「まあ、立派な瓜だこと」
おばあさんが瓜を拾って家に持ち帰り、包丁で切ろうとすると、ぱかりと瓜が割れて、中からかわいい女の子が出てきました。
「おお、おお。なんてかわいい子だろう」
おじいさんとおばあさんは大喜びで、この子を「瓜子姫」と名づけて、大切に育てました。
瓜子姫はすくすくと育って、器量よしのやさしい娘になりました。機織りがとても上手で、トントンカラリ、トントンカラリと、美しい布を織ります。白い布に花の模様を織り込んで、それはそれは見事なものでした。
庭の花にも毎朝水をやります。朝顔のつるをていねいに導いてやり、金魚の鉢の水も替えてやりました。小さな生き物たちにもやさしい、心の温かい娘です。
ある日のこと。おじいさんとおばあさんが町に出かけることになりました。
「瓜子姫や。誰が来ても戸を開けてはいけないよ」
「はい、わかりました」
瓜子姫はひとりで機を織っています。トントンカラリ、トントンカラリ。
すると、外から声がしました。
「瓜子姫、瓜子姫。わしはおばあさんの友だちだよ。戸を開けておくれ」
瓜子姫はためらいましたが、おばあさんの友だちだと聞いて、つい戸を開けてしまいました。
入ってきたのは、天邪鬼です。いたずら好きで、へそまがりの天邪鬼。
「おまえの代わりに、わしが機を織ってやろう」
天邪鬼は瓜子姫を押しのけて、機の前にどっかりと座りました。けれど、機織りなどできるわけがありません。ガッチャン、バッタンとめちゃくちゃに動かして、糸がからまり、美しい布をぐちゃぐちゃにしてしまいます。おまけに部屋の中も散らかしてて、壺をひっくり返し、干してある布を引っ張りました。
「やめてください。おばあさんに見せる布なのに」
瓜子姫が泣きそうになっていると、外からおじいさんとおばあさんの声が聞こえてきました。
「ただいま。瓜子姫、開けておくれ」
天邪鬼は慌てて逃げようとしましたが、おじいさんが戸を開けた拍子に、どーんとぶつかって転んでしまいました。
「こらっ、天邪鬼。うちの姫に何をしたんだ」
おじいさんが怒ると、天邪鬼はぶるぶると震えて小さくなります。
「ごめんなさい。もういたずらはしません」
天邪鬼はぺこぺこと頭を下げて、山のほうへ走って逃げていきました。
おばあさんが瓜子姫をぎゅっと抱きしめます。
「怖かったね。もう大丈夫だよ」
瓜子姫はこくんとうなずいて、おばあさんの胸に顔をうずめました。おばあさんの着物から、お日さまの匂いがします。
次の日から、瓜子姫はまた機を織り始めました。トントンカラリ、トントンカラリ。今度はもっと美しい布が、するすると織り上がっていきます。
夕暮れの光が部屋に差し込んで、白い布を金色に染めていました。庭の花が風に揺れて、どこからかひばりの声が聞こえています。