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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:5分

鶴の恩返し

むかし、雪深い村に、よへいという若者が住んでおりました。

ある冬の夕暮れ、よへいが雪道を歩いていると、一羽の鶴が罠にかかっているのを見つけました。白い羽が雪に沈んで、鶴はばたばたともがいています。

「かわいそうに。じっとしていなさい」

よへいはそっと罠を外してやりました。鶴は大きな翼を広げて、空へ飛んでいきます。夕焼けの空に白い姿がすうっと溶けていくのを、よへいはいつまでも見送りました。

その夜のことです。雪がしんしんと降る中、家の戸を叩く音がしました。

トントン。

戸を開けると、若い娘が立っています。雪をかぶった髪が白く光って、頬がうっすらと赤く染まっていました。

「道に迷いました。一晩泊めていただけませんか」

「さあ、お入り。囲炉裏のそばへどうぞ」

娘は「つう」と名乗りました。つうは料理が上手で、働き者で、よへいの暮らしはたちまち明るくなりました。ふたりはやがて夫婦になりました。

ある日、つうが言いました。

「わたしに機を織らせてください。けれど、織っているあいだは決して覗かないでくださいね」

つうは奥の部屋に入って、戸を閉めました。トントンカラリ、トントンカラリ。機を織る音が静かに響きます。

三日三晩、つうは部屋から出てきませんでした。機の音だけが聞こえています。

やがて戸が開いて、つうが出てきました。少しやつれた顔で、手には一反の布を持っています。

その布は息をのむほど美しいものでした。雪のように白く、月の光のようにやわらかく、見る角度によって銀色にきらめきます。

「これを町で売ってください」

布はたいそうな値で売れました。よへいの暮らしは楽になっていきます。

「つう、もう一反織ってくれないか」

つうは静かにうなずいて、また部屋にこもりました。トントンカラリ、トントンカラリ。

よへいは気になって仕方ありません。つうが出てくるたびに、やつれていくような気がするのです。

三度目に布を織り始めた夜。よへいはとうとう我慢できなくなりました。

そっと部屋の前に行って、ほんの少し戸を開けます。

中にいたのは、一羽の鶴でした。自分の羽を一本一本抜いて、布に織り込んでいるのです。だから布はあんなに美しかったのです。

鶴がこちらを振り向きました。

「見てしまいましたね」

鶴はみるみるつうの姿に戻りました。目には涙が光っています。

「わたしは、あの日助けていただいた鶴です。恩返しがしたくて参りました。けれど、姿を見られてしまった以上、もうここにはいられません」

よへいは手を伸ばしました。

「行かないでくれ。布なんかいらない。つうがいてくれればそれでいいんだ」

つうはそっと微笑みました。涙が頬を伝います。

「ありがとう。あなたのそばで過ごした日々は、わたしの宝物です」

つうは窓を開けて、空へと飛び立ちました。白い翼が月の光に照らされて、銀色にきらめきます。

よへいはいつまでも空を見上げていました。雪がしんしんと降り続けて、白い羽のようにやさしく頬に触れていきます。

遠くの空で、鶴の声がひとつ、澄んだ冬の夜に響きました。