暑い暑い夏の日のこと。
一羽のカラスが、水を探して飛んでいました。朝からずっと飛び続けて、のどがからからです。
川は干上がっていました。水たまりも乾いています。太陽がじりじりと照りつけて、地面がゆらゆらと揺れて見えます。
「水が飲みたいよう」
カラスがふらふらになって飛んでいると、道ばたに水差しがひとつ置いてありました。
「やった。水だ」
カラスは急いで水差しに頭を突っ込みました。ところが、くちばしが届きません。水差しの底のほうに、ほんの少しだけ水が残っているのですが、水差しの口が細くて頭が入らないのです。
水差しを倒そうとしましたが、重くてびくともしません。
カラスは考えました。じっと水差しを見つめて、あたりを見回して。
そのとき、足元に小さな石ころがたくさん転がっているのに気づきました。
カラスは石をひとつくわえて、水差しにぽとんと落としました。もうひとつ、ぽとん。もうひとつ、ぽとん。
石が増えるたびに、水がすこしずつ上がってきます。
ぽとん、ぽとん、ぽとん。
水面がだんだん近づいてきました。カラスはひとつ、またひとつと石を入れ続けます。
とうとう、くちばしが水に届きました。
ひとくち飲むと、冷たい水がのどを通って、体じゅうに染み渡ります。おいしい。世界でいちばんおいしい水でした。
カラスはごくごくと水を飲んで、満足そうに空を見上げました。青い空に白い雲がぽっかりと浮かんでいます。
元気を取り戻したカラスは、大きな翼を広げて飛び立ちました。夕方の風にのって、すうっと空高く昇っていきます。遠くの山に夕日が沈んで、空がだいだい色に染まっていきました。