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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:5分

たのきゅう

むかし、あるところに、たのきゅうという旅役者がおりました。

たのきゅうは芝居が上手で、どんな役でもこなします。村から村へ旅をしながら、お芝居を見せて暮らしていました。

ある日のこと。山道を歩いていると、日が暮れてしまいました。あたりは真っ暗です。

「困ったなあ。どこかに泊まるところはないかな」

すると、山の奥にぽつんと灯りが見えました。近づいてみると、大きな屋敷です。

「もしもし、一晩泊めていただけませんか」

戸が開いて、にこにこした顔のおじさんが出てきました。

「さあさあ、お入り。ちょうど退屈していたところだ」

おじさんはごちそうをたくさん用意してくれて、たのきゅうをもてなしてくれました。お酒も出てきて、ふたりで楽しく飲みます。

「おまえさんは何をしている人だい」

「旅役者でございます」

「おお、それは楽しそうだ。ひとつ芝居を見せてくれないか」

たのきゅうは得意の踊りを披露しました。扇子を使って、鳥になったり花になったり。おじさんは手を叩いて大喜びです。

お酒が進んで、おじさんの顔がだんだん赤くなってきます。そしてぽろりと言いました。

「実はな、わしは人間ではないんだ。この山に住む大蛇なのだよ」

たのきゅうはぎくりとしましたが、さすがは役者です。顔色ひとつ変えずに笑いました。

「それはそれは。大蛇さまに気に入っていただけて光栄です」

大蛇はすっかり上機嫌になって、さらにぽろぽろと秘密を話し始めます。

「わしにも怖いものがあるんだよ。それはな、にわとりの鳴き声だ。あの声を聞くと、力が抜けてしまうのだ」

たのきゅうは心の中でしっかり覚えておきました。

次の朝、たのきゅうは丁寧にお礼を言って屋敷を出ました。そして麓の村に降りると、村の人たちに話を聞きました。

「あの山の大蛇が暴れて、畑を荒らすので困っているんです」

たのきゅうは村の人たちと相談して、にわとりをたくさん集めました。そして山に向かって、一斉ににわとりを放します。

コケコッコー。コケコッコー。

にわとりたちが元気よく鳴きました。すると山が揺れて、大蛇がするすると姿を現します。にわとりの声を聞いた大蛇は、力が抜けてぐったりとなりました。

「まいった、まいった。もう暴れないから許してくれ」

大蛇はそう言って、山の奥深くへ帰っていきました。それからは畑を荒らすこともなくなったのです。

村の人たちはたのきゅうにお礼をたくさんくれましたが、たのきゅうはにこにこと手を振って、また旅に出ていきました。

「さて、次はどこの村でお芝居をしようかな」

夕暮れの道を、たのきゅうはのんびりと歩いていきます。茜色の空に、とんびがゆうゆうと輪を描いていました。遠くの山から、風がさわりと吹いてきます。