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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:4分

ほしのわたげ

夏の夜のことです。

お日さまがゆっくりと山のむこうに沈んで、空が藍色に変わっていきました。

星が一つ、またひとつと灯り始めます。今夜はいつもより、たくさんの星が出ているようです。

草むらからは虫の声が聞こえてきました。チリリリ、チリリリ。涼しい風が、頬をそっとなでていきます。

すると、不思議なことが起こりました。

星の光から、白いわたげのようなものが、ふわりと落ちてきたのです。

たんぽぽの綿毛よりも軽くて、蛍の光よりもやわらかい。空からひらり、ひらりと降りてきます。

ほしのわたげです。

手のひらを広げてみました。わたげが一つ、そっと降りてきて、指先にふわりと乗りました。

冷たくもなく、熱くもなく、ただやさしい温もりがあります。まるで誰かの吐息のように、ほんのりと温かい。

わたげはほのかに光っていました。てのひらの上で、淡い金色の光がゆらゆらと揺れています。

見つめていると、ふっと光の粒になって、夜の空気にとけていきました。

空を見上げると、わたげは次から次へと降ってきます。

ひらり。ひらり。ひらり。

髪の上にそっと降りてきたり、肩の上にふわりと積もったり、頬をやさしくくすぐったり。

あたり一面に、光るわたげが静かに舞っていました。夏の夜なのに、まるで雪が降っているようです。ただし、この雪はどこまでもあたたかい。

星たちがささやいているように聞こえました。

大丈夫だよ。

今夜もちゃんと見守っているよ。

安心して、おやすみ。

光のわたげに包まれていると、体がだんだんと軽くなっていきます。地面から少しだけ浮かび上がるような、不思議な心地よさです。

自分もわたげの一つになったような気がしました。ふわり、ふわりと、夜空をただよっています。

見おろすと、町の灯りがぽつぽつと見えます。遠くで川が光っています。山の稜線が、星の光にうっすらと浮かんでいます。

やがてわたげはゆっくりと降り積もって、やわらかな光の布団のようになりました。

その中にくるまると、どこまでも温かくて、どこまでもやわらかい。

虫の声が遠くなっていきます。星の光がやさしくまたたいています。

ほしのわたげは、朝が来るまでずっと、やさしく降り続けているのです。