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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:5分

舌切り雀

むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。

おじいさんはある日、けがをした小さなすずめを見つけました。羽を怪我して、飛べなくなっています。

「かわいそうに。うちで手当てしてやろう」

おじいさんはすずめを家に連れて帰り、やさしく羽に薬を塗ってやりました。毎日ごはんつぶをあげて、水を替えてやります。

すずめはチュンチュンとうれしそうに鳴きました。おじいさんはこのすずめに「おちょん」と名前をつけて、大切にかわいがりました。

けれど、おばあさんはすずめが気に入りません。

「鳥なんて汚いよ。早く逃がしておくれ」

ある日、おばあさんが障子を張り替えるために、のりを作っておきました。ところが目を離した隙に、おちょんがぺろぺろとのりを舐めてしまったのです。

おばあさんはかんかんに怒りました。

「このいたずらすずめ。出ておいき」

おばあさんがぱんぱんと手を叩くと、おちょんは驚いて窓から飛んでいってしまいました。羽はもうすっかり治っていたのです。

おじいさんが帰ってきて、おちょんがいないことに気づきました。

「おちょん。おちょんや」

おじいさんは山を越え、谷を渡り、おちょんを探して歩きました。

歩いて、歩いて、歩いて。やがて竹藪の奥に小さな宿が見えてきました。

「いらっしゃい、おじいさん。お待ちしておりました」

なんとそこにはおちょんがいて、たくさんのすずめたちと一緒に暮らしていたのです。すずめのお宿でした。

すずめたちはおじいさんをもてなしてくれました。炊きたてのごはんに、山菜の煮物。きのこのお吸い物に、栗のきんとん。すずめたちが小さな翼で踊りも見せてくれます。

ひとつひとつの踊りが、風にそよぐ花のようにやわらかでした。

帰り際、おちょんが言いました。

「おじいさん、お土産にこのつづらをどうぞ。大きいのと小さいの、どちらがいいですか」

おじいさんは小さなつづらを選びました。

「わしは年寄りだからね。小さいので十分だよ」

家に帰ってつづらを開けると、中から金や銀やきれいな布がたくさん出てきました。おじいさんは目を丸くして喜びます。

それを見たおばあさんは、自分も欲しくなりました。

「わたしも行ってくる」

おばあさんはすずめのお宿へ行き、大きなつづらをもらって帰ってきました。重たいつづらを背負って、よいしょよいしょと帰ります。

家に着いて、ふたを開けると。中から虫やら蛙やらがわあっと飛び出して、おばあさんはひっくり返ってしまいました。

「きゃあ」

おばあさんは泣きべそをかいています。おじいさんがよしよしとなだめました。

「欲張りすぎたね。でも、わしらにはこの小さなつづらで十分だよ」

おばあさんはこくんとうなずきました。

「そうだね。おちょんにも悪いことをしたね」

次の朝、庭の木の枝に、おちょんがちょこんと止まっていました。チュンチュンとうれしそうに鳴いています。

おばあさんがそっと手を差し出すと、おちょんはためらわずに、その手のひらに降り立ちました。小さな足が、ちょんと温かい。

朝日が縁側に差し込んで、三人を金色に包みます。庭の梅が、ほころび始めていました。