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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:4分

秘密の庭の昼下がり

石の壁にツタがからまった、古い扉を見つけました。

取っ手に手をかけると、ぎいっと開きます。扉の向こうに広がっていたのは、花でいっぱいの庭でした。

バラが咲いています。赤、白、ピンク、淡い黄色。アーチにからまって、壁を覆って、あちこちに花が溢れていました。甘い香りがふわりと漂ってきます。

石畳の小道が庭の奥へ続いています。道の両側にはラベンダーが紫色の穂を揺らしていて、歩くたびに足元からやさしい香りが立ちのぼりました。

蝶がひらひらと飛んでいます。白い蝶が一匹、バラの花にとまって、羽をゆっくりと開いたり閉じたりしていました。

小道を歩いていくと、小さな噴水がありました。石のお皿の上を水がちょろちょろと流れて、きらきらと光っています。水面に花びらが一枚浮かんで、くるくると回っていました。

噴水のそばにベンチがあります。木の板が日に焼けて、いい色になっていました。座ると、背中があたたかい。お日さまの光をたっぷり吸い込んでいるのです。

ミツバチがぶうんと飛んできて、すぐそばのスイートピーに止まりました。花の中にもぐりこんで、せっせと蜜を集めています。

木の枝にロビンがいました。赤い胸をした小さな鳥です。首をかしげて、きょとんとこちらを見ています。ぴちゅりと鳴いて、また枝を飛び移りました。巣があるのかもしれません。

石壁にからまったつたの葉が、風に揺れてさらさらと音を立てています。葉のあいだから、てんとう虫がのっそりと歩いてきました。赤い背中に黒い点が七つ。ナナホシテントウです。

庭の隅にはハーブが植わっています。ミントの葉っぱをひとつちぎって、指の間でこすってみました。すうっとした、すがすがしい匂いがします。

午後の日差しがやわらかくなってきました。木の影がすこし長くなって、花びらに夕方の光が斜めに当たっています。バラの色がさっきより深く見えました。

噴水の水音がちょろちょろと響いています。風がそよいで、ラベンダーがさわさわと揺れました。どこかで猫がにゃあと鳴いて、石壁の上をすたすたと歩いていきます。

ベンチに横になりました。木の板がほんのりとあたたかくて、花の香りに包まれます。木漏れ日が顔の上でちらちらと揺れて、風が髪をそっとなでていきました。

噴水の音と、蜂の羽音と、鳥のさえずり。庭のやさしい音が、ゆっくりと重なり合っています。まぶたの裏に花の色がゆらゆらと浮かんで、体がどんどんやわらかくなっていきました。