むかし、あるところに、かにのお母さんと小さな子がにたちが住んでおりました。
ある日のこと。かにのお母さんが道ばたでおにぎりを拾いました。まんまるの、おいしそうなおにぎりです。
そこへ、さるがやってきました。手には柿の種をひとつ持っています。
「かにさん、そのおにぎりと、この柿の種を取り替えっこしないかい。種を蒔けば、甘い柿がたくさんなるよ」
かにのお母さんは少し迷いましたが、子がにたちに柿を食べさせてやりたいと思いました。
「いいよ。取り替えっこしましょう」
さるはおにぎりをぱくぱくと食べて、さっさと行ってしまいました。
かにのお母さんは庭に柿の種を蒔きました。子がにたちが毎日、水をやります。
「早く芽を出せ、柿の種。出さなきゃ、はさみでちょんぎるぞ」
すると不思議なことに、にょきにょきと芽が出て、ぐんぐんと伸びて、あっという間に大きな柿の木になりました。秋になると、枝がたわむほどたくさんの柿の実がなっています。
「わあ、おいしそう」
子がにたちが目を輝かせます。けれど、かにの手では高い枝に届きません。
ちょうどそこへ、さるが通りかかりました。
「さるさん、柿を取ってくれないかい」
さるはするすると木に登って、柿をもいでは自分で食べ始めました。甘くて熟れた柿ばかり選んで、ぱくぱくと。
「さるさん、こっちにも分けておくれよ」
すると、さるはまだ青くて固い柿の実を、下に向かってぽーんと投げつけました。固い実がかにのお母さんにぶつかります。甲羅がぐしゃりと割れて、かにのお母さんはそのまま動かなくなりました。
「お母さん。お母さん」
子がにたちが泣きながら駆け寄りますが、お母さんはもう目を開けません。さるは知らん顔で、柿をお腹いっぱい食べると行ってしまいました。
子がにたちは泣いて泣いて、泣き疲れて、それでもまた泣きました。
その話を聞いて、怒ったのが栗と蜂と臼と牛のふんです。みんな、かにのお母さんの友だちでした。
「あのさるに、思い知らせてやろう」
みんなでさるの家に向かいました。さるが留守のあいだに、それぞれ隠れます。栗は囲炉裏の灰の中に。蜂は水桶のそばに。牛のふんは土間の入口に。臼は屋根の上に。
さるが帰ってきて、囲炉裏にあたろうとしました。すると灰の中から栗がポーンと飛び出して、さるのおしりにぶつかります。
「あちちち」
さるがあわてて水桶に手を伸ばすと、蜂がブーンと飛び出して、さるの鼻をチクリ。
「いたたた」
さるが飛び上がって外へ逃げようとすると、土間で牛のふんにすべって、つるーん。
「うわわわ」
最後に屋根の上から臼がドスンと落ちてきて、さるはぺしゃんこになってしまいました。
子がにたちはお母さんのお墓に報告しました。
「お母さん、みんなが助けてくれたよ。さるはもう悪いことできないよ」
秋の風がさわさわと吹いて、柿の葉が赤く色づいた庭に、やわらかな夕日が差し込んでいます。柿の木にはたくさんの実がなっていて、夕日の光でだいだい色に輝いていました。
子がにたちは柿の実をひとつもいで、お墓にそっとお供えしました。