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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:7分

ラプンツェル

むかし、ある高い塔の上に、ラプンツェルという女の子が暮らしていました。

塔には扉がありません。窓がひとつあるだけです。ラプンツェルは生まれたときに魔女に連れてこられて、ずっとこの塔の中で育ちました。

ラプンツェルには、とても長い金色の髪がありました。塔の上から垂らすと、地面まで届くほどです。日の光が当たると、きらきらと光って、まるで金の糸のようでした。

魔女が塔に来るときは、下から呼びかけます。

「ラプンツェル、ラプンツェル、おまえの髪を降ろしておくれ」

ラプンツェルが窓から長い髪を降ろすと、魔女はそれをつたって登ってきました。

ラプンツェルは毎日、窓辺に座って外を眺めます。遠くに森が広がっていて、小鳥たちが飛んでいきます。春には花の匂いが風に乗ってやってきて、秋には紅葉が赤や黄色に燃えていました。

窓辺にやってくる小鳥たちが、ラプンツェルの友だちでした。ラプンツェルが歌を歌うと、小鳥たちも一緒にさえずります。

その歌声は、澄んだ鈴の音のように森じゅうに響きました。

ある日のこと、森の中を馬で通りかかった王子さまが、その歌声を聞きました。美しい声に惹かれて、塔のそばまでやってきます。

塔には扉がない。どうやって上るのだろう。王子さまが隠れて見ていると、魔女がやってきて呼びかけました。

「ラプンツェル、ラプンツェル、おまえの髪を降ろしておくれ」

金色の髪が窓からするすると降りてきます。なるほど、と王子さまは思いました。

魔女が帰ったあと、王子さまは塔の下に立って言いました。

「ラプンツェル、ラプンツェル、おまえの髪を降ろしておくれ」

ラプンツェルが髪を降ろすと、王子さまが登ってきました。見知らぬ人を見て、ラプンツェルはびっくりします。

「驚かせてごめんなさい。あなたの歌声があまりに美しくて」

王子さまはやさしい目をしています。ラプンツェルはだんだんと安心して、ふたりは話を始めました。

王子さまは森の話をしてくれました。川のせせらぎの音。野原を吹く風。朝露に濡れた花の匂い。ラプンツェルが知らないことばかりです。

「わたし、いつか外の世界を歩いてみたい」

ラプンツェルの目がきらきらと輝きました。

それから王子さまは毎日、絹の糸を少しずつ持ってきてくれました。ラプンツェルは夜ごと、その糸で縄ばしごを編みます。月の光のもとで、細い指がするすると糸を結んでいきました。

ところが、ある日、ラプンツェルはうっかり魔女に言ってしまいました。

「おばあさんは、王子さまよりずっと重いのね」

魔女はかんかんに怒って、ラプンツェルの長い髪を切ってしまいます。そしてラプンツェルを遠い野原に連れていってしまいました。

その夜、王子さまがいつものように呼びかけると、切り落とされた髪が降りてきます。登ってみると、そこにいたのは魔女でした。

「ラプンツェルはもういないよ」

王子さまは驚いて塔から落ちてしまいました。幸い怪我はひどくありませんでしたが、目にいばらが当たって、何も見えなくなってしまいます。

王子さまはラプンツェルを探して歩きました。目が見えないまま、森を抜け、山を越え、野原を歩いて。風の音を頼りに、ただ歩き続けます。

どれほど歩いたでしょう。ある日、懐かしい歌声がかすかに聞こえてきました。あの、鈴のように澄んだ声です。

「ラプンツェル」

声のするほうへ走っていくと、花の咲く野原で、ラプンツェルが歌を歌っていました。

ラプンツェルは王子さまを見つけて駆け寄ります。涙がぽろぽろとこぼれて、その涙が王子さまの目に落ちました。

すると不思議なことに、王子さまの目が見えるようになったのです。

「見える。ラプンツェル、きみが見える」

目の前には、花に囲まれて立つラプンツェル。短くなった髪が風にそよいで、頬を涙がつたっています。けれど、笑っていました。

ふたりは手をつないで王子さまの国へ帰りました。お城の庭には花が咲き乱れて、やわらかな風が吹いています。ラプンツェルが初めて自分の足で歩く、広い広い世界でした。

夕暮れどき、ラプンツェルは庭に出て空を見上げました。空が薄紅色に染まって、遠くの森のてっぺんが金色に光っています。風が花の匂いを運んできて、小鳥たちが夕焼けの中を飛んでいきました。

ラプンツェルはそっと歌い始めます。塔の窓辺で歌っていたあの歌を。今度は広い空の下で、風に乗って、どこまでも遠くへ響いていきました。