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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:4分

樫の木と葦

野原のはずれに、大きな樫の木が一本立っていました。

太い幹、どっしりとした根。枝は空に向かって力強く伸びています。樫の木は自分の強さが自慢でした。

すぐそばの川べりには、細い葦がたくさん生えています。風が吹くとさらさらと揺れて、右に左にしなります。

樫の木は葦を見下ろして言いました。

「おまえたちは頼りないなあ。風が吹くたびに揺れて、折れてしまいそうだ。わたしを見てみろ。どんな風にもびくともしない」

葦はさらさらと音を立てて、静かに答えました。

「そうかもしれません。でもわたしたちは、風に逆らわないことを知っているのです」

樫の木は鼻で笑いました。

ある秋の夜のことです。遠くから黒い雲がむくむくと広がって、激しい嵐がやってきました。

風がごうごうと吹き荒れます。雨がばらばらと降って、稲妻がピカリと光りました。

樫の木はぐっと踏ん張ります。太い幹をまっすぐに立てて、風に立ち向かいます。枝がぎしぎしと軋みました。

けれど風はますます強くなります。ごうっという音とともに、ひときわ大きな風が吹き付けました。

めきめきめき。

樫の木の太い枝が折れてしまいました。どさりと地面に落ちて、葉っぱが散らばります。

葦たちはどうしていたかというと。風が吹くたびに、さらりと体をしならせていました。右に左に、風の向くままに揺れます。風が通り過ぎると、またすっと元に戻る。

朝が来て、嵐はおさまりました。空が明るくなって、虹がうっすらとかかっています。

樫の木は枝を失って、すこし寂しそうにしていました。葦たちは変わらず、朝の風にさらさらと揺れています。

葦がやさしく言いました。

「樫の木さん。強いことは立派なことです。でも、ときには風に身を任せることも大切なのですよ」

樫の木はしばらく黙っていましたが、やがてゆっくりとうなずきました。折れた枝のあとから、小さな新しい芽がぽつりと顔を出しています。

秋の風がそよりと吹いて、葦がさらさらと歌いました。水面にきらきらと光が踊って、川はどこまでも静かに流れていきます。