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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:4分

北風と太陽

ある日のこと。北風と太陽が言い合いを始めました。

「ぼくのほうが強い」

北風が言いました。冷たい声です。

「いいえ、わたしのほうが力がありますよ」

太陽がおだやかに答えました。

ちょうどそのとき、道の向こうから旅人が歩いてきます。分厚いコートを着た旅人です。

「よし。あの旅人のコートを脱がせたほうが勝ちだ」

北風が言いました。太陽はにっこりとうなずきます。

「いいですよ。あなたからどうぞ」

北風は大きく息を吸い込んで、ビューッと吹きつけました。冷たい風が旅人の体を包みます。

旅人はぶるっと体を震わせて、コートの前をぎゅっと握りしめました。

北風はもっと強く吹きます。ゴオオッと木の枝が揺れて、枯れ葉が舞い上がりました。

けれど旅人は、コートをますます強く体に巻きつけるばかりです。

「もっとだ。もっと強く」

北風は力いっぱい吹きましたが、旅人はコートを脱ぐどころか、ボタンまでしっかり留めてしまいました。

「だめだ。ちっとも脱がない」

北風はへとへとになって、風を止めました。

「では、わたしの番ですね」

太陽がゆっくりと雲の間から顔を出しました。

ぽかぽかと、やさしい光が降り注ぎます。道の上も、木の枝も、旅人の肩も、じんわりと温かくなっていきました。

旅人の頬に、ほんのりと赤みが差します。

「あれ、なんだかあたたかいな」

太陽はもう少しだけ明るく照りました。草のあいだからたんぽぽが顔を出して、ちょうちょがひらひらと飛び始めます。

旅人はボタンをはずしました。

「ああ、気持ちがいい」

太陽がもう少し光を注ぐと、旅人はコートを脱いで腕にかけました。額に汗を拭いて、にこにこしながら歩いていきます。

北風は目を丸くしました。

「ぼくがあんなに頑張ったのに、太陽はにこにこしているだけじゃないか」

太陽はやさしく言いました。

「力ずくでは、心は動きません。あたたかさのほうが、ずっと強いのですよ」

北風はしばらく黙っていましたが、やがてそっとうなずきました。

夕方になって、空がだいだい色に染まりました。太陽はゆっくりと山の向こうに沈んでいきます。

北風はその夕焼けをぼんやりと眺めていました。なんだか、少しだけあたたかい気持ちになっています。

空に一番星が灯りました。やわらかな夜が、静かにやってきます。