🔒
oyasumi.baby よみきかせ時間目安:4分

ねずみの嫁入り

むかし、あるところに、ねずみのお父さんとお母さんがおりました。ふたりには、チュウ子という可愛い娘がいます。

チュウ子はとびきり器量よしで、お父さんとお母さんの自慢の娘でした。

「チュウ子には、世界でいちばん偉い方のところへ嫁にやりたい」

お父さんが腕を組んで言いました。

「世界でいちばん偉い方。それは誰だろう」

お父さんは空を見上げました。おひさまが燦々と輝いています。

「おひさま。あなたは世界でいちばん偉い方でしょう。うちのチュウ子をもらってください」

おひさまはにこにこと笑いました。

「わたしよりも偉い者がいますよ。雲さんです。雲さんはわたしの顔を隠してしまうのですから」

お父さんは雲のところへ行きました。

「雲さん。あなたは世界でいちばん偉い方でしょう。うちのチュウ子をもらってください」

雲はふわふわと揺れて答えます。

「わたしよりも偉い者がいますよ。風さんです。風さんはわたしをどこへでも吹き飛ばしてしまうのですから」

お父さんは風のところへ行きました。

「風さん。あなたは世界でいちばん偉い方でしょう」

風はびゅうびゅうと吹きながら答えます。

「わたしよりも偉い者がいますよ。壁さんです。どんなに吹いても、壁さんはびくともしないのですから」

お父さんは壁のところへ行きました。大きくて頑丈な塀です。

「壁さん。あなたこそ世界でいちばん偉い方でしょう」

壁はぼそりと答えました。

「いいえ。わたしよりも偉い者がいますよ。ねずみさんです。ねずみさんはわたしに穴を開けてしまうのですから」

お父さんはぽかんと口を開けました。

「ねずみが、いちばん偉い」

ぐるりと一周して、戻ってきたのです。

お父さんは家に帰って、お母さんに話しました。

「なんだ。いちばん偉いのは、わしらねずみだったよ」

お母さんはくすっと笑いました。

「それなら、チュウ子はねずみのところにお嫁に行くのがいちばんね」

隣に住むチュウ太は、まじめで気のやさしいねずみです。チュウ子とチュウ太は昔から仲良しでした。

チュウ子はほっぺたを赤くして、こくんとうなずきます。

お嫁入りの夜。チュウ子は白い花を頭にさして、チュウ太のところへ歩いていきます。小さなちょうちんの灯りが、ぽつぽつと道を照らしていました。

虫の声がりんりんと響いて、空にはまあるいお月さまが浮かんでいます。

お父さんとお母さんは縁側に並んで座って、ちょうちんの灯りが遠くなっていくのを、いつまでも見守っていました。