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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:4分

王様の耳はロバの耳

むかし、ある国に、王様がおりました。

この王様には、ひとつだけ秘密がありました。帽子の下に隠れている耳が、ロバの耳だったのです。長くてぴんと立った、ふわふわの毛の生えた耳。

王様はこの耳がとても恥ずかしくて、いつも大きな帽子を被っています。寝るときも、お風呂のときも。

けれど、髪を切るときだけは帽子を外さなくてはなりません。

王様のところへは、決まった床屋さんがひとりだけやってきます。床屋さんは秘密を守ると約束していました。

「誰にも言ってはならぬぞ。言ったら大変なことになる」

「もちろんでございます」

床屋さんはちゃんと秘密を守りました。けれど、日が経つにつれて、胸の中がぱんぱんに膨らんでいきます。誰かに言いたくて、言いたくて、たまりません。

ごはんを食べても、仕事をしても、夜寝るときも。頭の中はロバの耳のことでいっぱいです。

「このままでは破裂してしまう」

床屋さんは町はずれの野原へ行きました。あたりには誰もいません。風が吹いて、草がさわさわと揺れているだけ。

床屋さんは地面に穴を掘りました。深い深い穴です。穴の底に向かって、顔を近づけて叫びました。

「王様の耳は、ロバの耳」

言ってしまった。胸がすうっと軽くなります。床屋さんは穴を土で埋めて、ほっとしながら家に帰りました。

ところが。穴を埋めたところから、葦が一本生えてきたのです。すうっと伸びて、風に揺れるたびに、不思議な声が聞こえてきます。

「王様の耳は、ロバの耳」

風が吹くたびに、葦がささやきます。その声は町じゅうに広がっていきました。

「王様の耳は、ロバの耳」

町の人たちはひそひそと噂を始めます。やがて王様の耳にも届きました。

王様はかんかんに怒って、床屋さんを呼びつけました。

「おまえが喋ったのだな」

床屋さんはぶるぶる震えて、穴に叫んだことを正直に話しました。

すると、町の人たちが口々に言いました。

「王様、ロバの耳だっていいじゃありませんか」

「ふわふわしていて、かわいいですよ」

「わたしなんか、鼻が大きいのがコンプレックスです」

王様はぽかんとしました。恐る恐る帽子を外してみます。ロバの耳がぴょこんと立ちました。

町の人たちはにこにこ笑っています。誰も怖がったりしませんでした。

王様の目がじわりと潤みます。

「そうか。隠さなくてもよかったのか」

それからの王様は、帽子を被らずに過ごすようになりました。ロバの耳がぴくぴくと動くのが、子どもたちに大人気です。

夕暮れの空が茜色に染まっています。野原の葦がさらさらと揺れて、今度は何も言わずに、ただやさしく歌っているようでした。