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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:5分

うさぎとかめ

むかし、あるところに、一羽のうさぎと一匹のかめが住んでおりました。

うさぎは足がとても速くて、風のように走ります。

ピョン、ピョン、ピョン。

かめはゆっくりゆっくり歩きます。一歩一歩、踏みしめるように。

トコ、トコ、トコ。

ある日のこと。うさぎがかめに声をかけました。

「かめさん、ぼくと走りくらべをしませんか。あの丘の上の大きな木まで、どちらが先に着くか」

かめは静かにうなずきました。

「いいですよ。やってみましょう」

森の動物たちが集まってきます。りすがどんぐりの上に座って、ことりたちが枝の上でさえずりました。

「よーい、どん」

うさぎが飛び出しました。ピョン、ピョン、ピョン。あっという間に遠くの木立のあいだに消えていきます。

かめはゆっくりと歩き始めました。トコ、トコ、トコ。小さな足が、やわらかな土を踏んでいきます。

うさぎはどんどん進んでいきます。振り返ると、かめの姿はもう見えません。

「ずいぶん差がついたな。ちょっと休もうかな」

道ばたに大きな木がありました。木漏れ日がちらちらと揺れて、草の上に温かな光の模様をつくっています。そよ風がさわさわと吹いて、木の葉が歌っているようでした。

うさぎは草の上にごろんと横になりました。

ぽかぽかして、気持ちがいい。まぶたがだんだん重くなってきます。

うとうと、うとうと。うさぎはぐっすり眠ってしまいました。

そのあいだも、かめは歩き続けています。

トコ、トコ、トコ。トコ、トコ、トコ。

坂道がきつくても、石がごろごろしていても、かめは止まりません。一歩ずつ、一歩ずつ、前に進んでいきます。

やがて丘のふもとに着きました。上を見上げると、大きな木がてっぺんに見えます。

トコ、トコ、トコ。

かめは丘をのぼっていきます。夕日がかめの甲羅をオレンジ色に染めました。

そして、とうとう。

かめは大きな木のところに着きました。

うさぎが目を覚ましたのは、空が夕焼けに染まる頃でした。はっとして飛び起きます。

「たいへんだ」

ピョンピョンピョンと丘をかけ上がりましたが、大きな木の下には、かめがもう静かに座っていました。

うさぎは息を切らしながら言いました。

「かめさん、すごいや。ぼくの負けだ」

かめはにっこりと笑いました。

「わたしはただ、止まらなかっただけですよ」

ふたりは大きな木の下に並んで座りました。丘の上から見おろすと、森が夕日に照らされて金色に輝いています。

空がオレンジ色から紫色に変わっていきます。一番星がぽつりと灯りました。

風がそっと吹いて、木の葉がさらさらと歌います。

うさぎとかめは、何も言わずに夕暮れを眺めていました。隣に誰かがいるということが、こんなにもあたたかいのだと、うさぎは初めて知ったのです。