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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:3分

鹿とぶどうの木

ある秋の日のこと。

一頭の鹿が、猟師に追われて森の中を走っていました。木の間をすり抜け、茂みを飛び越え、息を切らせて走ります。

大きなぶどうの木が見えてきました。葉が豊かに茂って、つるが低く垂れ下がっています。

鹿はぶどうの木の陰にもぐりこみました。葉っぱがカーテンのように鹿の体を隠してくれます。

猟師がやってきました。あたりを見回しますが、ぶどうの葉が厚くて、鹿の姿は見えません。猟師は首をかしげて、通り過ぎていきました。

鹿はほっと息をつきました。

「助かった」

安心した鹿は、急にお腹がすいてきました。目の前にぶどうの葉が揺れています。みずみずしくて、おいしそうに見えます。

鹿は何も考えずに、もしゃもしゃとぶどうの葉を食べ始めました。一枚、二枚、三枚と。

葉が減っていくと、鹿の体がだんだん見えるようになってきます。茶色い背中が、すっかりむき出しになりました。

そこへ、猟師が戻ってきたのです。

「おお、こんなところにいたか」

鹿は慌てて飛び出して、再び森の奥へ走っていきました。今度はなんとか逃げ切りましたが、足ががくがくと震えています。

鹿は息を整えながら、ぶどうの木のほうを振り返りました。

「自分を助けてくれた木の葉を、わたしは食べてしまった」

鹿はしばらくじっとうつむいていました。風がそよりと吹いて、残ったぶどうの葉がさらさらと揺れています。夕日がぶどうの実を赤紫に染めて、森がだんだん静かになっていきました。