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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:4分

都会のねずみと田舎のねずみ

田舎の野原に、一匹のねずみが住んでおりました。

小さな穴の中が、田舎ねずみのお家です。木の実や麦の粒を少しずつ集めて、つつましく暮らしています。

ある日、都会から友だちのねずみが遊びに来ました。都会ねずみはぴかぴかの毛並みで、おしゃれな帽子を被っています。

「よく来てくれたねえ。さあ、食べておくれ」

田舎ねずみは、とっておきの麦の穂と、どんぐりの実と、干した木の実を並べました。

都会ねずみはちょっと首をかしげます。

「ありがとう。でも、いつもこれだけなの」

「うん。でもおいしいよ」

田舎ねずみはにこにこして、どんぐりをかじります。かりこり、かりこり。

都会ねずみは、もそもそと麦の穂をかじりました。

「きみ、都会に来てみないか。もっとおいしいものがたくさんあるよ」

田舎ねずみは目を輝かせて、都会ねずみについていきました。

都会に着くと、大きなお屋敷がありました。都会ねずみは壁の隙間からするりと入って、食堂のテーブルの上に飛び乗ります。

田舎ねずみは目を丸くしました。テーブルの上には見たこともないごちそうが並んでいるのです。チーズにハム、パンにバター。ケーキにはいちごがのっていて、クリームがたっぷり。

「すごいなあ。これ、ぜんぶ食べていいの」

「もちろん。さあ、好きなだけお食べ」

田舎ねずみがチーズをひとかけら口に入れた、そのときです。

ガチャン。

ドアが開いて、人間が入ってきました。

「逃げろ」

都会ねずみが叫びます。ふたりはテーブルから飛び降りて、壁の隙間に逃げ込みました。心臓がどきどきと鳴っています。

しばらくして人間がいなくなると、また食べ始めます。今度はハムに手を伸ばしました。

すると、また足音が聞こえてきました。今度は猫です。

「にゃあ」

ふたりはまた慌てて逃げ出しました。田舎ねずみはぶるぶると震えています。

「ぼく、もう帰るよ」

都会ねずみはちょっと寂しそうにしました。

「そうかい。もう少しいればいいのに」

田舎ねずみは首を横に振りました。

「ごちそうはおいしかった。でも、びくびくしながら食べるごちそうより、安心して食べる麦の穂のほうが、ぼくにはおいしいんだ」

田舎ねずみは野原に帰ってきました。小さな穴のお家がここにあります。どんぐりと麦の穂。いつもと同じ夕ごはんですが、のんびりと味わって食べることができます。

夕焼けが野原を金色に染めていました。虫の声がりんりんと聞こえて、風がやさしく草を揺らしています。田舎ねずみは穴の入り口に座って、大きな夕日をぼんやりと眺めました。

「やっぱり、ここがいちばんだなあ」

星がぽつりぽつりと現れ始めて、野原はだんだん静かになっていきます。