クリスマスイブの夜のことです。
チルチルとミチルという兄妹が、小さなベッドで眠ろうとしていました。木の窓から、雪がちらちらと降るのが見えます。
「ねえ、チルチル。幸せの青い鳥って、ほんとうにいるのかな」
「さあ、どうだろう」
すると、窓からきらりと光が差し込んできました。光の中から、小さなおばあさんが現れます。
「わたしは妖精です。二人に頼みがあるのですよ」
妖精のおばあさんは、二人にダイヤモンドのついた帽子を渡しました。
「このダイヤモンドを回すと、ものの本当の姿が見えるようになります。青い鳥を探す旅に出てちょうだい」
チルチルが帽子のダイヤモンドをくるりと回すと、部屋が光に包まれました。暖炉から火の精が飛び出し、水差しから水の精が現れ、パンの精、砂糖の精、ミルクの精、猫と犬もみんな人の姿になって話し始めます。
「さあ、青い鳥を探しに行きましょう」
みんなで最初に訪れたのは、「思い出の国」でした。
そこには、亡くなったおじいさんとおばあさんが静かに暮らしています。二人を見てにっこり笑いました。
「おお、チルチル、ミチル。会いに来てくれたのかい」
「おじいさん、おばあさん」
チルチルとミチルは嬉しくて、ぎゅっと抱きつきました。おじいさんの手は温かくて、おばあさんはいい匂いがします。おばあさんが焼いてくれたクッキーは、昔と同じバターの味がしました。
「おじいさん、さみしくない」
「さみしくなんかないよ。おまえたちが思い出してくれるたびに、わしらは目を覚ますのだから」
おじいさんの飼っている小鳥が青く光っています。けれど、この国を出ると、青い鳥は色が変わってしまいました。
次に訪れたのは、「夜の宮殿」でした。大きな扉がいくつも並んでいます。恐怖、病気、戦争。扉の向こうには怖いものがいるようです。
でもチルチルは勇気を出して、扉を一つ開けてみました。中から飛び出してきたのは、きらきら光る夜の精たちです。こわくはありませんでした。
「森の国」にも行きました。大きな木々がゆさゆさと枝を揺らして話しかけてきます。風がざわざわと歌って、木漏れ日がきらきらと地面に踊っていました。きのこの精が道案内をしてくれて、苔むした岩のあいだに青い羽根が一枚落ちています。でも鳥は飛んでいってしまいました。
「幸福の国」では、太ったぜいたくさんたちがごちそうを食べ続けています。チルチルがダイヤモンドを回すと、本当の幸福たちが姿を現しました。「母の愛の幸福」「健康の幸福」「夕暮れの幸福」。どれも静かに微笑んで、やわらかな光を放っています。
「未来の国」では、まだ生まれていない赤ちゃんたちに出会いました。みんな青い服を着て、ふわふわの雲の上でにこにこしています。
「ぼくはもうすぐ生まれるんだ。地球ってどんなところ」
ミチルがやさしく答えます。
「とっても温かいところよ」
どこへ行っても、青い鳥は見つかりませんでした。捕まえても色が変わってしまうのです。
長い旅を終えて、チルチルとミチルは家に帰りました。
朝が来て、目を覚ますと、あの小さなベッドの上でした。窓から朝日が差し込んで、部屋が金色に輝いています。
「夢だったのかな」
チルチルがつぶやいたとき、ミチルが声を上げました。
「チルチル、見て」
窓辺の鳥かごの中で、いつも飼っている小鳥が朝日を浴びて、青く輝いているのです。
「ずっと、ここにいたんだ」
幸せの青い鳥は、遠くではなく、ずっとそばにいたのです。
朝の光がやわらかく部屋を照らしています。小鳥がピィピィとさえずって、まるで歌を歌っているようでした。窓の外では雪がやんで、木の枝に朝日がきらきらと輝いています。
チルチルとミチルは顔を見合わせて、にっこりと笑いました。暖炉の火がぱちぱちと燃えて、部屋じゅうが温かな光に包まれています。