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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:5分

賢いグレーテル

むかし、グレーテルという料理の上手な女の子がいました。

グレーテルは町の料理人で、どんな料理もおいしく作ります。特に得意なのは鶏の丸焼き。こんがりときつね色に焼き上げて、バターの香りがふわりと漂う、それはそれは見事な焼き加減です。

ある日、グレーテルの旦那さまが言いました。

「今晩、お客さまが来る。鶏を二羽、おいしく焼いておくれ」

「おまかせください」

グレーテルは張り切って鶏を焼き始めました。台所にいい匂いが広がっていきます。じゅうじゅうと脂がはねて、皮がぱりぱりときつね色に焼けていく。

鶏が焼けるあいだ、グレーテルはぶどう酒をちびりと飲みました。料理人はのどが渇くのです。もうちびり。もうちびり。

鶏がこんがりと焼き上がりました。つやつやと光って、おいしそうな匂いがたまりません。でもお客さまはまだ来ません。

「冷めてしまうわ。もったいない」

グレーテルは焼きたての鶏の手羽先をぽきりと折って、味見をしました。さくっとした皮の中から、じゅわっと肉汁があふれます。

「おいしい。これは上出来」

もう片方の手羽先も味見しました。おいしくて止まりません。もも肉もひと口。むね肉もひと口。

気がつくと、一羽目の鶏がすっかりなくなっていました。

「あらまあ」

グレーテルは目を丸くしましたが、すぐに考えました。一羽だけ出すのはみっともない。かといって、もう焼く時間はありません。

二羽目の鶏をじっと見つめます。こちらもこんがりといい色です。いい匂いがします。

「味がそろっていないといけないから、こちらも確かめないと」

ぱくり。ぱくり。二羽目もきれいになくなってしまいました。

そこへ旦那さまが来て、お客さまがそろそろ来ると言います。グレーテルはひらめきました。

お客さまがやってきたとき、グレーテルはこっそり耳打ちしました。

「大変、逃げてください。旦那さまがあなたの耳を切ろうとしていますよ」

お客さまはびっくりして走って帰ってしまいました。

そして旦那さまには、こう言いました。

「お客さまが鶏を二羽とも持って逃げてしまいました」

旦那さまは包丁を持って追いかけていきます。お客さまはそれを見て、ますます走りました。旦那さまも走ります。ふたりの影が夕暮れの町をどたばたと駆けていきました。

グレーテルは台所の椅子に座って、くすくすと笑いました。おなかがいっぱいで、体がぽかぽかとあたたかい。

窓の外に夕焼けが広がっています。町の屋根が夕日に照らされて、赤く染まっていました。遠くの塔から鐘の音がかあんと響いて、つばめが低く飛んでいきます。

グレーテルはぶどう酒をもうひと口飲んで、満足そうに目を細めました。台所にはまだ鶏のこんがりした匂いがほんのりと漂って、暖炉の火がやさしくゆれています。