むかし、きつねと鶴が友だちでした。
ある日、きつねが鶴を夕ごはんに招待しました。
「今夜はとびきりのスープを作ったよ。たっぷり食べておくれ」
きつねはスープを平たいお皿に注ぎました。湯気がほわほわと立ちのぼって、とてもおいしそうな匂いがします。
きつねはぺろぺろとお皿を舐めて、スープをおいしそうに飲みます。平たいお皿は、きつねにはぴったりです。
ところが、鶴は困ってしまいました。長いくちばしでは、平たいお皿のスープをうまく飲めないのです。ちょんちょんとくちばしの先で突いても、ほんの少ししか口に入りません。
きつねはそれを見て、くすくすと笑っていました。意地悪だったのです。
鶴はお腹がぺこぺこのまま帰りました。けれど、怒ったりはしません。にこりと笑って、きつねに言いました。
「今度はわたしの家に来てね。お返しにごちそうするわ」
次の日、きつねは鶴の家にやってきました。いい匂いが家じゅうに広がっています。
「今日はシチューを作ったのよ。たっぷり召し上がれ」
鶴はシチューを、細長い壺に入れて出しました。壺の口は細くて深い。
鶴は長いくちばしを壺に入れて、おいしそうにシチューを飲みます。にんじんとお豆の甘い香りが漂いました。
きつねは壺の前で困っていました。鼻先を入れようとしても、壺の口が細くて入りません。舌を出して舐めてみますが、ほんの少ししか届かない。
きつねはやっと気がつきました。昨日、自分が鶴にしたことと同じことを、今度は自分がされているのだと。
きつねは耳をぺたんと下げて、ぽつりと言いました。
「ごめんよ。昨日は意地悪をした」
鶴はくすっと笑いました。
「わかってくれればいいのよ」
鶴はシチューを広いお皿に移し替えてくれました。ふたりで一緒に食べます。きつねはぺろぺろと、鶴はちょんちょんと。それぞれの食べ方で、同じシチューを味わいました。
「おいしいね」
「おいしいね」
窓の外に夕焼けが広がっています。ふたりの影が壁にやわらかく映って、ゆらゆらと揺れていました。虫の声が静かに響いて、夜のとばりがゆっくりと降りてきます。