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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:3分

鳩と蟻

春の昼下がりのこと。

小さな蟻が、川の岸辺を歩いていました。のどが渇いて、水を飲もうと水面に近づきます。

ところが、足をすべらせて、ぽちゃんと川に落ちてしまいました。

「助けて」

蟻はばたばたともがきますが、小さな体では流れに逆らえません。水がぐるぐると渦を巻いて、蟻を押し流していきます。

そのとき、近くの木の枝にとまっていた鳩が、下を見ていました。

「あら、大変」

鳩はくちばしで葉っぱを一枚ちぎって、川に落としました。葉っぱがふわりと水面に浮かびます。

蟻は必死に泳いで、葉っぱの上によじ登りました。ぜえぜえと息をつきます。葉っぱはゆっくりと流れて、やがて岸にたどり着きました。

「ありがとう、鳩さん。命を助けてもらいました」

蟻は木の上の鳩に向かって、小さな声でお礼を言いました。鳩はくるるっと鳴いて、にっこりとうなずきます。

それからしばらく経ったある日のこと。

猟師がそっと近づいてきて、木の上の鳩に狙いを定めました。弓をぎりりと引きます。

それを見つけたのが、あの蟻でした。蟻はさっと猟師の足に登って、思いきり噛みつきました。

「いたっ」

猟師が足を払った拍子に、手元が狂いました。矢は見当違いの方向に飛んでいきます。

鳩はびっくりして飛び立ちました。ばさばさと翼を広げて、高い空へ。見おろすと、地面の上で小さな蟻が手を振っています。

鳩はくるるっと鳴きました。ありがとう、の気持ちを込めて。

春の風がそよりと吹いて、木の葉がさらさらと音を立てました。川の水面がきらきらと光って、蟻は水辺の花の影でひと休みしています。空の高いところで、鳩がゆうゆうと円を描いていました。