ある日、ろばが道ばたでライオンの皮を見つけました。
猟師が干しておいた皮が、風で飛ばされてきたのです。茶色いたてがみのついた、立派な毛皮でした。
「これを被ったら、みんなびっくりするだろうなあ」
ろばはライオンの皮をすっぽりと被って、のっそのっそと歩き出しました。
牛がろばを見て、腰を抜かしました。
「ら、ライオンだ」
羊たちもメエメエと鳴きながら逃げていきます。にわとりはバタバタと木の上に飛び上がりました。
ろばは得意になりました。胸を張って、ライオンのふりをして歩きます。
ところが、村の入り口できつねに出会いました。きつねはじっとろばを見つめて、首をかしげます。
「おや。ライオンさん、ひとつ吠えてみてくださいませんか」
ろばはうっかり、いつもの癖で声を出してしまいました。
「ヒーホー」
きつねはぷっと吹き出しました。
「ライオンの声じゃないよ。あなた、ろばさんでしょう」
ろばは真っ赤になって、ライオンの皮を脱ぎました。皮はくしゃりと地面に落ちて、ただの古い毛皮に戻ります。
「ごめんよ。みんなを驚かせたかっただけなんだ」
きつねはくすっと笑って言いました。
「ろばさんはろばさんのままでいいんじゃない。荷物を運ぶのは、ライオンよりずっと上手だもの」
ろばはちょっと照れくさそうに、耳をぱたぱたと動かしました。夕方の風がさわりと吹いて、野原の草がやさしく揺れています。