秋の昼下がりのこと。
きつねが野原を歩いていると、高い木の枝にぶどうがたわわに実っているのを見つけました。紫色のぶどうが、お日さまの光を浴びてつやつやと輝いています。
「おいしそうだなあ」
きつねはお腹がぺこぺこでした。あのぶどうを食べたくてたまりません。
ぴょん。きつねが跳びあがりました。けれど、ぶどうには届きません。
もう一度。ぴょん。やっぱり届きません。
助走をつけて、えいっ。ぴょーん。前足の先がかすりましたが、ぶどうはびくともしません。
何度跳んでも、何度跳んでも、ぶどうは高いところで揺れているだけ。きつねはとうとう息が切れて、ぺたんと座り込みました。
「ふん。あのぶどうはきっと酸っぱいに決まっている。食べなくてよかった」
きつねはそう言って、つんと澄ました顔で歩き去りました。
でも、ほんとうは知っていたのです。あのぶどうは、きっとおいしいということを。
とぼとぼと歩いていると、道ばたに野いちごを見つけました。赤くて、小さくて、地面にちょこんと実っています。
きつねがぱくりと食べると、甘い汁が口いっぱいに広がりました。
「なんだ、こっちのほうがおいしいじゃないか」
きつねはもう一粒、もう一粒と野いちごを食べました。ほっぺたが赤くなるくらい、おいしい。
秋の風が吹いて、木の葉がかさかさと音を立てています。夕日がきつねの毛を金色に染めて、長い影が道の上に伸びていました。