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金太郎

むかし、足柄山の奥深くに、金太郎という男の子が住んでおりました。

金太郎はお母さんとふたり暮らし。赤いはらかけをつけた、元気いっぱいの男の子です。

朝、目を覚ますと、山の空気はひんやりと澄んでいます。木の葉のあいだから朝日がきらきらと差し込んで、森じゅうが金色に光っていました。

金太郎は毎日、山の動物たちと一緒に遊びます。くまと相撲をとり、うさぎとかけっこをし、さるとは木登りで競争です。

「はっけよい、のこった」

くまが両手を広げます。金太郎はぐっと踏ん張って、どすこい。大きなくまを押し出しました。

「金太郎は強いなあ」

くまが感心します。金太郎はにかっと笑いました。

「くまさんも強いよ。また明日もやろうね」

お昼になると、みんなで谷川へ行きます。水が冷たくて気持ちいい。魚がぴちぴちと跳ねて、銀色のうろこがきらりと光りました。金太郎は大きな岩の上に座って、おにぎりをほおばります。お母さんが握ってくれたおにぎりは、塩がきいていて、ふっくらと温かい。くまにもうさぎにも分けてやりました。

ある日のこと。山の奥に続く道で、大きな木が倒れて谷川をふさいでいました。水がせき止められて、小さな魚たちが困っています。

「よし、わたしが動かそう」

金太郎が両手で木を抱えて、えいっと持ち上げます。大きな木がずずっと動いて、水がさあっと流れ始めました。

魚たちがぴちぴちと跳ねて喜びます。

それからは、倒れた木を橋のかわりにして、動物たちが谷を渡れるようになりました。うさぎもたぬきも、しかも、みんなこの橋を使います。

ある夕暮れ、山を歩いていると、侍が一人やってきました。

「おまえが金太郎か。噂は聞いているぞ。山の動物と相撲をとるほど力が強く、心のやさしい子どもだと」

侍の名前は源頼光。都から来た、立派なお侍さんです。

「わたしと一緒に都に来ないか。おまえの力で、たくさんの人を守ることができる」

金太郎はお母さんの顔を見ました。お母さんはにっこりとうなずきます。

「行っておいで。おまえなら大丈夫」

金太郎は動物たちに別れを告げました。くまがぽろぽろと涙をこぼします。

「また会おうな。くまさん、うさぎさん、さるさん」

金太郎は山を降りていきました。振り返ると、動物たちが丘の上に並んで見送っています。夕日が足柄山をだいだい色に染めて、空に一番星がぽつりと光りました。

山の風がやさしく吹いて、木の葉がさらさらとささやいています。まるで、いってらっしゃいと言っているように。