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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:5分

わらしべ長者

むかし、ある村に、びんぼうな若者が住んでおりました。

何をやってもうまくいきません。畑を耕しても実らず、魚を釣っても釣れず。ため息ばかりの毎日です。

ある日、若者は観音さまにお参りに行きました。

「どうか、わたしに幸せをお授けください」

すると、観音さまの声がしました。

「お堂を出て最初に手に触れたものを、大事にしなさい」

若者はお堂を出ました。ところが、石につまずいて転んでしまったのです。

起き上がると、手の中に一本のわらしべが握られていました。

「こんなわら一本が」

不思議に思いましたが、観音さまの言葉です。大事に持って歩き出しました。

しばらくすると、顔のまわりをアブがぶんぶんと飛び回ります。若者はアブを捕まえて、わらしべの先にくくりつけました。

道を歩いていくと、泣いている男の子がいます。そばでお母さんが困った顔をしていました。

男の子がわらしべの先のアブを見つけて、泣きやみました。目をきらきらさせて、アブをじっと見ています。

「おじちゃん、それちょうだい」

若者がわらしべをあげると、男の子はにっこり笑いました。お母さんがお礼にみかんを三つくれました。まるまると大きな、いい匂いのするみかんです。

さらに歩いていくと、道ばたに女の人が座り込んでいます。喉が渇いて動けなくなったようです。

「このみかんをどうぞ」

若者がみかんをあげると、女の人は生き返ったように元気になりました。

「ありがとうございます。お礼にこれを」

女の人は、美しい絹の反物をくれました。藍色の地に、白い花が染め抜かれた上等な布です。

反物を大事に抱えて歩いていると、立派な馬に乗った侍が向こうからやってきました。ところが、馬が急に苦しそうにいなないて、道に倒れてしまったのです。

「馬が動かん。困ったことだ」

侍は急ぎの用があるようです。若者は申し出ました。

「この反物と馬を取り替えてくれませんか。わたしが馬の面倒を見ます」

侍は喜んで反物を受け取り、足早に去っていきました。

若者は馬のそばにしゃがんで、首をやさしくなでてやりました。近くの川から水を汲んできて、少しずつ飲ませます。やわらかい草を摘んで、口元に運んでやりました。

しばらくすると、馬はゆっくりと立ち上がりました。若者の手をぺろりと舐めて、目を細めます。

「よかったなあ。元気になったなあ」

若者が馬に乗って進んでいくと、大きなお屋敷の前に出ました。門のところに主人が立っていて、馬を見て目を輝かせました。

「なんと立派な馬だ。どうか譲ってくれないか。代わりにこの屋敷と田んぼをあげよう」

若者は驚きましたが、馬をなでて言いました。

「この馬を大事にしてくれますか」

「もちろんだとも」

こうして若者は、わら一本からお屋敷と田んぼの主になったのです。

その夜、若者は縁側に座って月を見上げました。田んぼの水面に月が映って、きらきらと揺れています。

風がそよりと吹いて、稲の匂いがしました。虫の声がりんりんと響いています。

若者はそっと手を合わせました。観音さまと、出会ったすべての人たちに、ありがとうを。