むかし、あるところに、おじいさんが住んでおりました。
おじいさんは春に、小さな種をひとつぶ蒔きました。かぶの種です。
お日さまがぽかぽかと照って、雨がしとしとと降って。かぶはすくすくと育っていきました。
夏が来て、秋が来て。
かぶは大きくなりました。大きく、大きく、どんどん大きくなって、とうとう見たこともないくらいの、おおきなおおきなかぶになりました。
「さあ、抜くとしよう」
おじいさんがかぶに手をかけて、引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
かぶは動きません。びくともしません。
おじいさんはおばあさんを呼んできました。おばあさんがおじいさんの腰につかまって、ふたりで引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
かぶは動きません。まだまだ動きません。
おばあさんは孫娘を呼んできました。孫娘がおばあさんの腰につかまって、三人で引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
かぶは動きません。ぐぐっと揺れたような気がしましたが、やっぱり抜けません。
孫娘は犬を呼んできました。犬が孫娘のスカートをくわえて、四人と一匹で引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
かぶは動きません。
犬は猫を呼んできました。猫が犬のしっぽにつかまって、みんなで引っ張ります。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
かぶは動きません。もうちょっとのような気がするのに、まだ抜けないのです。
猫はねずみを呼んできました。小さな小さなねずみです。ねずみが猫のしっぽにちょこんとつかまりました。
「さあ、みんなでいくよ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
ズボッ。
かぶが抜けました。
おじいさんもおばあさんも孫娘も、犬も猫もねずみも、みんなひっくり返って尻もちをつきました。
見上げると、おおきなおおきなかぶが、秋の空をバックにどーんとそびえています。
みんなで顔を見合わせて、にっこり笑いました。
その夜、おばあさんがかぶのスープを作ってくれました。大きなお鍋でことこと煮ると、甘くてやさしい匂いが家じゅうに広がります。
みんなで並んで、ふうふう息を吹きかけながらいただきました。犬も猫もねずみも、みんなで一緒に。
あたたかくて、やさしくて、おいしい秋の夜でした。