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oyasumi.baby よみきかせ時間目安:6分

おむすびころりん

むかし、むかし、ある山里に、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。

おじいさんは毎日、山へ芝刈りに出かけます。おばあさんはいつも、おむすびを握って持たせてくれました。

ぎゅっ、ぎゅっ。

おばあさんの手は温かくて、おむすびはいつもふっくらとしています。真ん中に梅干しをひとつ入れて、のりをぱりっと巻いてくれました。

「はい、お昼のおむすびだよ」

「ありがとう。今日もおいしそうだ」

おじいさんはおむすびを竹の皮に包んで、にこにこしながら山へ向かいます。

山の木々は青々として、鳥の声がチチチと響いていました。木漏れ日が足元にまだらな影をつくっています。

お昼になりました。おじいさんは切り株に腰をおろして、おむすびを広げます。

ところが、ひとつ目のおむすびが手からつるりと滑って、コロコロと転がっていってしまいました。

「おっと、おっと」

おむすびは坂道をころころ、ころころと転がります。おじいさんが追いかけますが、なかなか追いつきません。

おむすびは木の根っこをぴょんと跳ねて、草むらを抜けて、とうとう小さな穴の中へ、ぽとんと落ちてしまいました。

「ありゃりゃ」

おじいさんが穴を覗き込むと、奥のほうからかすかに歌声が聞こえてきます。

「おむすびころりん、すっとんとん。おむすびころりん、すっとんとん」

高い声やら低い声やら、何匹もの声が重なって、楽しそうに歌っているのです。

おじいさんは嬉しくなって、残りのおむすびも穴の中に転がしてやりました。

「おむすびころりん、すっとんとん」

歌声がいっそう大きくなります。どうやらねずみたちの声のようです。

すると穴の中から、小さな声がしました。

「おじいさん、おじいさん。おいしいおむすびをありがとうございます。どうぞ、中へおいでください」

おじいさんが穴に足を入れると、するすると滑り降りていきます。着いた先は、ぱあっと明るい広間でした。

白いねずみたちが何十匹もいて、みんなにこにこ笑っています。テーブルには先ほどのおむすびが並んでいて、ねずみたちがうれしそうにほおばっていました。

「こんなにおいしいものは初めてです」

「おばあさんのおむすびは、世界で一番ですね」

ねずみの長老がちょこちょこと歩いてきて、深々とお辞儀をしました。

「お礼に、ごちそうを差し上げましょう」

ねずみたちがお膳を運んできます。炊きたてのご飯に、焼き魚、煮物、お味噌汁。湯気がふわあっと立ちのぼって、いい匂いが広間いっぱいに広がりました。

「こりゃあ、ありがたい」

おじいさんがおいしそうに食べていると、ねずみたちはうれしそうに踊り始めました。

「おむすびころりん、すっとんとん」

小さなしっぽを揺らして、くるくる回ります。おじいさんも手拍子をして、みんなで楽しい時間を過ごしました。

帰り際、ねずみの長老がつづらを一つ持ってきました。

「おじいさん、これはほんのお礼です。お家でゆっくり開けてくださいな」

「こんなにしてもらって、すまないねえ」

おじいさんはつづらを背負って、穴からすうっと地上に戻りました。

家に帰っておばあさんと一緒につづらを開けると、中にはお米や小判がぎっしり入っています。

「まあ、まあ」

おばあさんが目を丸くしました。おじいさんはねずみたちのことを話して聞かせます。

「あの子たち、おまえのおむすびが世界一おいしいと言っておったよ」

おばあさんは照れくさそうに笑いました。

「そうかい。それなら、明日もおむすびを握ろうかね」

その晩、ふたりは囲炉裏のそばに並んで座りました。火がぱちぱちと小さな音を立てています。

窓の外では、秋の虫がりんりんと鳴いていました。月の光が障子をほんのりと白く照らしています。

おじいさんの耳には、まだあの歌声がかすかに聞こえているようでした。

おむすびころりん、すっとんとん。

おむすびころりん、すっとんとん。